今回の都市農家研修では、愛知県西尾市にあるピースファームの星野隼人さんのもとで研修を行いました。
到着した参加者の方の第一声が “やっと来れた!!”ではじまり、終始親しみのある雰囲気で研修は行われました。そう、星野さんはYoutube“ちょこっと自然農 -try natural farming-”の「ほっしーさん」としておなじみです。
自然農と検索すればトップに出てくるほどの農業YouTuberとして活躍されています。今回の参加者の方の中にも、最近畑をやり始めて星野さんのYoutubeを見ているという方が多く見えました。
ここで簡単に星野さんの紹介をさせていただきます。
実は、ピースファームを始める以前は、マイファームで運営している体験農園のアドバイザーとして活動されてました。2014年から耕作放棄地であった農地を開墾しピースファームに。
現在は《ファームインタープリター》という畑を通して自然の面白さや大切さを伝える人として体験農業からYoutubeなどの幅広く活動行っています。
ですので、基本的に畑で採れた野菜自体を販売することは行っておりません。農場で生産された野菜は体験・来年の種用といった形で利用し、体験農業、Youtubeといったツールを使って経験や知識を提供して収益を生み出しています。
【研修内容】
まず、実際に圃場案内から農業研修は始まりました。
この時期の畑では、夏野菜の栽培を終えて、種取り用に残している野菜と秋冬野菜の見学を主に紹介していただきました。
【夏野菜の種取の様子】
ピースファームでは基本的に種取りが継続してできる固定種の種を栽培しています。来年も種をつなぎ、同じ品種を栽培するためです。最近の種苗法の改定もあり、気になるF1品種と固定種の違いについてのお話をしながら、各自、様々な種を収穫していきました!
自然栽培のリアル、無農薬で本当に野菜は育つの?葉物栽培はやっぱり難しい?どうやってニンジンの発芽率を上げているの?など沢山の疑問を持った中、実際に見学して、理想と現実の差、またその差はどこからきて、どうやったら改善できるのか。失敗例から学ぶことの大事さを星野さんの視点や体験からありのまま紹介していただき、自然に栽培して収穫した、採れたて野菜のおいしさに気づかされることばかりでした。
その後は実際に農業体験に移りました。
農業体験では、普段の生活では利用しない農具の使い方について、実際に農具を手に取りながら、疲れない、辛くない、そして楽しい!
農具の使い方レクチャーを行っていただきました。
これが意外と難しく、星野さんの動作を見ているだけだと、簡単そうに見えますが、
足腰をしっかり使うので、インナーマッスルが必須です!
長年使い慣れることで、星野さんのように速くかつ長く作業できるようになるとのこと。
ところで「遠山の目付」ってなにかご存じですか?剣道を行う際の視線の使い方のことだそうで、相手の顔を中心に見ながら、相手の全体を見るという見方です。
星野さんは学生時代剣道部に所属していたそうで、レクチャーの間、様々な剣道の用語を農作業に見立て、普通では楽しくもない作業が、あっという間に小学生の遊び感覚になるユニークな楽しみ方まで教えてくださいました。
視点をとらえて、視野を広く見ることはどの分野においても重要ですね。
【~継続は力なり~】
星野さんの等身大な話し方に、普段は農から離れている私たちの心も動かされました。それは100%自身の体験に基づくお話であったからだと感じました。
質問の中に、どうして野菜を販売しないの? という素朴な疑問に星野さんが、野菜を販売しない理由。それは、小規模でさらに自然農という安定した生産量を見込めない栽培形態において、収穫・出荷・販売の作業がかなり手間のかかることであるから、という合理的な理由でした。
普段スーパーなどで何気なく手に取る野菜たちに農家さんの見えない手間がかかっていることに気づかされます。一方で、合理的な理由の中に、自然栽培を行う本質があるようにも感じました。生産を目的にしてしまうと、嫌でも生産に対するお金について考えてしまいます。
しかし、体験農業や、Youtubeなどで体験や知識を目的とすれば、それは、自分のプロデュースと知識量に置き換えられます。また、同時に同じような考えを持つ人との繋がりを作ることにもなります。
この体験農業は身近に自然を感じてほしいといった星野さんの想いから始めたようです。
話の中で、このように自分の好きなこと、疑問に思ったことを突き詰めて、行動し継続し続けてきた中で、自然と現在の暮らしや農業の形態がついて来たと話していらっしゃいました。
前例のない中、いろいろと苦戦されたこともあったそうですが、星野さんの自給自足と環境を意識した暮らしを軸に好きなことを行うという新しい農業の形態は、結果的に耕作放棄地に緑を増やし、少ない栽培面積での農業を可能にさらに、持続可能な農業のモデルに繋がっているのではないかと感じました。
星野さんのようなユニークな考えで、今後も農業が面白くなっていったらいいな、面白くしていきたいなと思う研修でした。